0contact-描き初め- レポ
➤1月9日@K.D.ハポン
ライブドローイングイベント「0contact-描き初め-」
無事に終了いたしました。ご来場のみなさん、ありがとうございました!
➤そして画家の小林広恵さんとニシムラマホさん。そして音楽屋のいちろーさん、近藤寛峰さんとの共演……大先輩たちに囲まれて、こんな得難い経験ができたのは本当に幸福でありました。それから、映像オペに急遽入ってくださったユキオさんに出会えたのも嬉しかった…皆さん本当に、ありがとうございました。
[↑全てのパフォーマンスが終了した後のステージ床面の様子。ぐっちゃぐちゃ、だけどなんだかきれいにも見えるというのが不可思議。]
➤さて、突然ですがここで2016年の抱負を(笑)
日曜画家つらくも七瀬の今年の目標のひとつは「自分の活動履歴を記録して一覧にすること」です。
その今年初の記録として、人生初のライブペイントイベント中に感じたこと、見つけたことをつらつらと書き記しておこうかと思います。
➤今回のイベントは、画家3人、音楽家2人が3組に分かれて3つのライブペイントを行うという趣旨のものでした。
特に、デュオ・トリオパフォーマンスでは、画家による即興ペインティングと、音楽家による即興演奏が同時に行われます。音から絵へ、絵から音へと互いに影響しあいながらパフォーマンスが進行するわけです。この同時即興がどんな特徴や意味を持っているのか考え始めるといろいろ思考が展開しちゃうんですが、とりあえず今はこの同時即興についての感想だけ述べておきます。
「人に影響を受けながら創作活動するのはたのしい!!」
[↑チラシを見るとよくわかるので、参照]
しかも、3組それぞれが異なった意思や趣味をもって即興に挑んだので、即興パフォーマンスのいろんな形を見ることができたことも、このイベントの醍醐味でありました。せっかくなので、それぞれのパフォーマンスについて1つずつ、覚え書きをしておきますね。
➤画家・ニシムラマホさんのドローイングはソロ。つまり、無音の中で行われました。
舞台に置かれたのは、黒い大きなキャンバス、一本のチョーク、そして目覚まし時計。
そのシンプルな空間にマホさんは細い身ひとつでひたひたと踏み込み、チョークに人の精神の圧力をかけて渾身のドローイング。
キャンバスを白い線で分断し、開花させ、進化させ…画面が様々に変化をしていく最中、ふいに目覚まし時計のベルが鳴り響き、マホさんは夢から覚めたように画面とチョークから手を離して、静かな余韻と共にどこかに去っていきました。
[↑マホさんが描き残したドローイング作品。10分弱の描画でした。]
マホさんのパフォーマンスで私が感動したのは、画面を走る白線がみるみる進化していく様子を眺める楽しさや驚きが、素直に鑑賞者の心に入り込んできたところです。パフォーマンスに感情移入させられた。その力が凄いとおもいました。即興パフォーマンスとして、洗練されたものだったと思います。
ふだん、絵を描かない人は見ることの無い「制作過程」の面白さがダイレクトに伝わり、かつ画面に残された線の軌跡のひとつひとつに、マホさんの精神が乗っているのがよく見える。これこそ絵を描く楽しみと苦しみという感じがしました。
➤さて、ふたつめのパフォーマンスは画家・つらくも七瀬と作曲家・いちろーのデュオ。
私自身の出演した演目なので、客観的にレポするのが難しいんですが、書きたい事かかせていただきます…(笑)
舞台には、瓶に詰められた鮮やかな5色の絵の具とクラフト紙の敷かれた床。そこに、木の枝葉を抱えた人が現れ、おもむろに木の葉も床も自身の手足もいっしょくたにして絵の具で塗りつぶしはじめる。初めは耳鳴りのような環境音からはじまったBGMも、だんだんとピアノの旋律に変わり熱を帯びる。最後に残ったのはモールス信号と、鮮やかに汚された床に佇むつらくもさんでした。
[↑パフォーマンス後の様子。こんなに色鮮やかなのに、なんか鬱屈して見えるのは何故でしょう。]
今回、人生初のライブペイントではありましたが、一番重視したのは絵を描くことそれ自体ではなくて、”絵を舞台装置の1つとして、言語の無い演劇をすること” でした。演劇というと語弊があるかもしれませんが……絵を描くという行為を、何かべつの心理的な状態に置き換えてお客さんに提示したかったのです。絵も描くけど、演劇もしていたし、ダンスもする自分としては、それが今は一番納得できるパフォーマンスの形でした。これについて利点もあれば、弱点も見つけたのですが…それはまた追々。
まあでもそんなことより今回はじめてライブペイントをするにあたって「足で絵を描く!!」という願望をもって挑んだんですが、絵具を垂らした床があんなにツルッ ツルに滑るものだとは思いませんでしたね!(開始2分辺りで盛大にこけました。)
(これは皆さんにも機会があればぜひ一度体験して頂きたいんたいんですがね、すごいんです。絵具を垂らした床は「ここは氷の上か!?スケートリンクか!?」というくらいに滑るんです。粘性のある液体があんなに摩擦係数を低めるとは存じ上げませんでした。)
でもつぅるっつぅるの床すら逆手にとって、全身でダイナミックに絵の具で遊べたのは本当に面白かったです。観客のひとりに、小学生くらいの女の子がいたんですが、その子が目を輝かせて「私もこんな風に絵の具で遊びたい!」と言ってくれたのは何よりもうれしかった。
ちなみに、パフォーマンスの時にいちろーさんが演奏した音楽をなぞった音源がSoundCloudにすでにアップロードされております。よかったらぜひ聞いてみてください。写真と併せて鑑賞するのも良し。
[↑いろんな方から写真を提供していただきました。ありがとうございます…!]
➤さてそれではいよいよ今回のイベントの集大成ともいえる、3つ目のパフォーマンスについて。画家・小林広恵さんと、再び登場のニシムラマホさん。そしてドラマーの近藤寛峰さんによるトリオ!
立てかけられた4枚と、床に置かれた1枚による合計5枚のキャンバスに、広恵さんが思うまま線を描き、色を塗り付け、インクを振り掛けていくのが、近藤寛峰さんの色とりどりな打楽器の音のはずみと渾然一体となって進行していくので「次に画面の上に何が起こるんだろう」というワクワクに満ちていました。そこでふいに、マホさんが舞台上に登場して、キャンバスの画面を眺めて、おそるおそる手をつけます。
[↑広恵さんの絵に手をつけるマホさん]
しかしソロパフォーマンスで観たときのような覇気がマホさんから出てきません。
後に聞くと、このトリオライブには "広恵さんが描いて構成した画面を、マホさんに破壊してもらう" という目的があったそうです。が、広恵さん自身が、画面を構成しては塗り壊し、また再構築するということをすでに出来ていたので、その必然性がなくなってしまったんだそうです。画家の先輩方のその追及心と、画面に対する真摯な姿勢に私は胸を打たれました…。
が、そんなことを私は本番時にはつゆ知らず、また横で見ていて2人で絵を描いているのが非常に、非常に楽しそうだったので、思わず飛び入り参加をしてしまいました。そしてついにいちろーさんも交えた5人でパフォーマンスは加速していき、画面の色は塗り替えられ、塗り替えられ、様々に変化していきましたとさ。
[↑居るはずのない4人目。]
このパフォーマンスで私が感動したのは、すでに存在している画面に色が重ねられ、どんどん更新されていくところでした。最終的に存在した絵の下に、何層も何層も別の絵が存在するということをこんな風に実感できたのはライブペイントならではのことだったと思います。
また、色彩のメインを担った広恵さんが、油絵の画家さんであることもその要因だったんでしょうか。例えば私はペン画をメインに書いてきたので「層状に塗りつぶして画面を更新していく」経験が少ない。一方でおそらく油絵の人は、その経験が厚いんだろうなと…ほんとうに鮮やかな変化でした。
➤というわけで、今回はこんな感じでありました。書きたい事がまだ全然書ききれなかったような気がするんですが…それは今後ひそかに生かされていくのかなと思います、たぶん。
そういえば、ゼロコンタクトからの帰り道、ドラムのミネさんとお話する機会があったんですが「ライブペイントを経ることで、アーティストの画風が変化することもある。」という言葉が印象に残ってます。たしかにこれは、変化のための滋養になった。
➤このレポートを読んで、画家さんや、あるいはライブペイントに興味持ってくださる方が一人でもいれば幸いです。次回、ゼロコンタクトは6月頃に開催だそうですよ~。またお会いしましょう。つらくもでした。